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食の安全とトレーサビリティの現状<第1回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
食の安全とトレーサビリティの現状<第1回> 2009/1/10
1.食の不祥事と、揺らぐ消費者の信頼
2.HACCPがサポートする「食の安全」
3.HACCP導入とビジネスチャンス
4.ISO22000と、安心・安全な食のマネジメント
1.食の不祥事と、揺らぐ消費者の信頼
 昨年、食の信頼を揺るがせた事件を大別すると、
①直接原材料や加工食品に薬物が混入したケース
②薬物などに汚染された非食用の原材料が、食用と偽装され流通したケース
③原産地などが偽装されたり、賞味期限などが改ざんされて販売されたケース
の3つに分けられます。
①のケースは、輸入原材料や輸入加工食品において発生しました。加工工場の安全性は確保されていることから人為的な混入が疑われ、輸入食材の信頼を落とす結果となりました。
②のケースは、汚染された非食用指定原材料を、流通価格の安さから食用と偽装販売した大変悪質な事件で、汚染原材料を使用した二次加工食品生産業者では、該当商品の回収のほか、汚染材料不使用の商品への風評被害も加わり、深刻な事態となっています。
③のケースでは、①などの影響で、割高でも安全な国内産食品を求める消費者の声の高まりに便乗して、輸入食材を国内産と偽ったり、同じ国内産でもより流通価格の高いブランド産地への偽装が行われていました。また食品保存技術の進化を背景に、賞味期限切れの商品の賞味期限表示を改ざんしたり、飲食店で余った料理を使い回したりなど、食や商行為のモラルが問われる事件でした。
これら3つのケースの中でも、特に①と②の事件については、食の安全性という「生活の根幹」にかかわる問題として衝撃をもって受け止められ、今も皆さんの記憶に新しいと思います。
図1 2008年に起きた「食」に関する主な事件・事故
2.HACCPがサポートする「食の安全」
 それではこれらの「食の安全」という基本前提はどのように守られているのでしょうか。
食料品加工の現場では現在、HACCP(ハサップ)と呼ばれる管理手法が主流になりつつあります。HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略称です。日本語では「危害分析重要管理点」と訳され、食品製造時の工程で危害要因(Hazard)が発生するポイントを分析(Analysis)し、そのポイントを重点的に管理する(Critical Control Point)ことで、食の安全を確保する手法です。ここでいう危害要因とは、
・生物的な要因(病原菌・微生物など)
・化学的な要因(貝毒やヒスタミンなど)
・物理的要因(金属片など)
の3種類で、それぞれを分けて分析・評価・対応します。HACCP以前に行われていた「サンプル抽出法」による検査の欠点をカバーしているのが特長です。
HACCPではCCP(重要管理点)を確定させることで「○○度の内部温度で△△分加熱処理して滅菌する」「製品製造終了後、梱包過程前に金属探知機で金属片混入をチェックする」など、明確に判断可能な指標を設定することができます。結果として従来方式では難しかった、全製品の連続監視・記録が可能です。管理記録を整備・保管することで、出荷・流通後も製品ロットに対する過去の履歴が残されることにもなり、これらの記録は、第三者に対しても客観的なデータとして提出ができるため、特に訴訟王国アメリカではPL法対策(HACCPなどの証明可能な安全対策が導入されていないとPL法保険自体に加入できない)として導入するケースも数多く見受けられます。
図2 HACCP導入でこう変わる(乳業種での導入例)
 HACCPの歴史を紐解くと、1960年代を席巻したアメリカ合衆国の宇宙開発「アポロ計画」にたどりつきます。食中毒や食料汚染など絶対に起こってはならない、宇宙食の安全性確保のために考案された管理手法です。米国では、まず低酸性缶詰の法規制として採用され、後に水産食品、食肉および食肉加工品、ジュースへと適用が広がりました。遅れて導入した欧州(EU)でも、現在ではすべての食品と飼料に適用されています。
このように米国とEUが義務付けを行っているため、それらの国々に食料品輸出を行う国・企業においてHACCPへの対応は必須です。現在では国際食品規格委員会でガイドラインが策定され、「食の安全を管理する世界標準手法」となっています。
3.HACCP導入とビジネスチャンス
 資本力のある大企業でなくても「食の安全確保の徹底」を可能とするHACCPは、国内でも導入を支援する動きが活発化しています。
これは前述のようにより厳しさを増すPL法への対応とともに、CCPを絞り込むことで大きな設備投資を行うことなく導入することが可能だからです。
HACCP導入には前段階として、生産する製品の特徴、使用方法、製造工程、材料の納入・製品の出荷など流通体制の確認・検討が行われます。その結果、多くの伝票類はHACCP手法とPL法対策に則った形式で作成し直す必要があるため、そこに印刷需要が生まれます。
農林水産省や厚生労働省では、中小企業(資本金3億円以下・従業員300人以下のいずれかに該当)を中心に「HACCP法(食品の製造過程の管理高度化に関する臨時措置法)」という優遇措置法が定められており、導入を希望する企業・団体が提出したHACCP導入計画を関係省庁が認定することで、
・導入のための施設整備を行う際の融資
・導入に伴う不動産取得税の軽減措置
・導入計画の策定や現地指導などの支援
などの優遇措置を受けられます。
特に「導入のための施設整備を行う際の融資」には、ソフトウェア開発費、研究員の人件費、コンサル委託費など、導入と一体で行われるソフト的な経費も対象となっているため、導入の早い段階で、印刷物に関して導入企業にアプローチすることが重要といえます。
HACCP導入で発生する印刷需要は伝票類だけではありません。企業としてHACCP導入は、自社製品の安全性をアピールできる大きな機会でもあります。多くの場合社外向けの印刷物にHACCP導入の項目が追加、もしくは、導入設備などの紹介をかねて新規作成されます。これらの需要を獲得するためにも、導入検討がわかった段階での迅速な対処が望まれます。
また、近年「リテールHACCP」という小売業におけるHACCP導入も注目されています。小売りされる商品は直接輸出とは関係がないため取得は必須ではありませんが、安全性の確保による消費者へのアピールや、PL法対策という側面から導入が加速しています。
ハンバーガーや牛丼などのファーストフード大手チェーンでの導入はもとより、危害要因分析を的確に行いCCPを減らすことで、個人経営の飲食店でも比較的容易に導入が可能なところにHACCPのスケーラビリティの良さが表れているといえるでしょう。
図3 HACCP法で高度化計画を認証されるメリット例
図4 HACCP手法の導入手順とビジネスチャンス
4.ISO22000と、安心・安全な食のマネジメント
 食の安全を確保するためには、食品生産業だけの努力では対応しきれない場合も多々あります。特にリテールHACCPの現場では、納入される製品の安全性がすべての基本となります。
そこで食の安全を実践運用するためのマネジメント認証として、国際標準規格「ISO22000」があります。正式名を「食品安全マネジメントシステムフードチェーンに関わる組織に対する要求事項」といい、2005年9月に正式発行されました。
ISO22000の特徴は、安全な食品を生産・流通・販売するために、フードチェーンに直接もしくは間接的にかかわる「全ての組織」に対して、食に対する安全の認証が行われることです。
例えば冷蔵ケースなども、ケース外の温度に対する設定温度の維持能力によっては、鮮度が保てない場合も考えられます。機材としての維持能力が十分であっても、設置方法のミスから結果として問題が発生する場合も存在します。
印刷業界にかかわる例でいえば、生産者側で食の安全を確保しても、流通段階で安全性がそこなわれ事故が発生するのを防ぐ帳票フォーマットなどが関係します。通常の受領票では、いつ発送され、いつ納入されたのか?、その間の温度管理履歴はどうだったのか?その荷物が発送時と同一のものであるか?などの情報が読み取りにくい場合があります。これらの情報が、ネットワーク経由のデジタルデータと、視認しやすい複写伝票により発送側・流通側・荷受側に確実に記録される必要があります。
マネジメントシステムを整えるメリットは他にもあります。HACCP手法で基本的な食の安全が守れていても、人為的な表示改ざんや、異物混入などには対応しきれないからです。
2008年の食品のニュースの中に、即席カップめんに防虫剤成分が移り香する事件がありました。当初は「またもや薬物混入事件か」と騒がれましたが、生産メーカーの迅速なデータ開示と立ち入り検査受け入れにより、早々に出荷後の保管・流通の仕方による「移り香」であることが判明しました。また、その経緯はマスコミなどでの報道の他に、製造会社のインターネット上のホームページでも迅速に告知され、結果として大きな風評被害は起きませんでした。これらはマネジメントシステムの整備があればこそ可能な対応だったといえるでしょう。
このように消費者の手に渡った製品の経歴を、ひいては原材料の段階まで追跡可能な状態で管理することを「トレーサビリティを確保する」といいます。小売店で手にする食料品に対して、場合によっては原材料の生産農家の「顔」も見ることができるトレーサビリティは、消費者の「食への信頼を取り戻す」打開策として、また商品の価値を高めるの付加情報として注目を浴びています。
次回は、この「トレーサビリティがもたらす透明性」と「消費者との信頼関係」、そして食の安全確保に対する印刷物の役割について紹介します。
 
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