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当世フリーペーパー事情<第2回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
当世フリーペーパー事情<第2回> 2008/8/8
1.印刷会社とフリーペーパービジネス
2.フリーペーパーの広告比率と採算ライン
3.フリーペーパーの関連ビジネス
4.まとめ
1.印刷会社とフリーペーパービジネス
 既にご存じのように、1991年、印刷会社の全国組織「全国ぷらざ協議会」が設立されました。会員になった日本各地の印刷会社は、ここでフリーペーパーのノウハウを学び、それぞれの地域で「月刊ぷらざ」という名称のフリーペーパーを発刊してきました。
その草分けとなった、フリーペーパー「月刊ぷらざ佐賀」(本部・佐賀市、事務局・東京)は、本年で創刊20周年。発行部数約86,000部(約130ページ)、世帯配布率は96%で日本一(東京商工リサーチ調べ)を誇っています。「月刊ぷらざ」は、これまでに佐賀、福岡、大分、山口、岡山、岐阜、長野、群馬、茨城の9県で11誌が創刊されました。それぞれに健闘しているものの、競合誌の創刊ラッシュの中、地域情報マガジンという性格上、年齢別、趣味別といったターゲットを絞れない「幕の内弁当」的な紙面展開を強いられていますが、月刊誌として捨てられないよう月間のテレビ番組表を掲載するなどの工夫を行っています。
一方、会員の中には、学んだノウハウを地域独自にアレンジして展開し、成長している例も多々あります。北海道北見市のニュース紙「経済の伝書鳩」は、週6回(日曜日を除く毎日夕方)発行のタブロイド判、全ページフルカラー体裁(基本12〜24ページ)の日刊紙で約85,000世帯に無料配布されています。 また、同じ北海道の「月刊しゅん(AB版・184ページ、十勝地区で約12万部を無料配布)」は今年で創刊10周年。会社内に編集部門を持ち、若いスタッフによる独特の切り口での地域情報と、新鮮な誌面づくりが話題となっています。
印刷会社がフリーペーパーを発行するというビジネスモデルは、今ある資源を活用でき、機械の稼働率を高め、定期的な収入源の確保が可能という点など、どの参入組よりも低リスクで始められることが利点となります。課題はソフトの部分でしょう。いかに読者に喜ばれる企画、編集能力を持つフリーペーパー会社に、編集・制作を「外注」できるかにかかっています。フリーペーパーをすべて自前で創刊するのに比べ、「外注」を使えば、一定のクオリティを確保しながら、早期の創刊が可能となります。また多くの苦労を負いながら成長してきたフリーペーパー制作会社にとっても安定収入源の確保となり、双方がメリットを共有できる関係が生まれます。
(左)月刊ぷらざ佐賀(右)経済の伝書鳩
(左)月刊ぷらざ佐賀(右)経済の伝書鳩
●月刊ぷらざ 各地区の発行部数
2.フリーペーパーの広告量比率と採算ライン
 フリーペーパーのメリットは、まず対象読者を設定しているため、広告主に効果をアピールすることが可能で広告収入(経費+収益)を事前に確保できる点にあります。広告主さえ確保すれば有料誌のように売れ行きを心配することも、返品される不安もありません。また、フリーペーパーの成功例から、明確なターゲットの設定や紙面デザイン・構成はもちろんですが、ターゲットへの配布方法と配布場所の設定が成功の大きなカギを握っていることが分かってきました。
フリーペーパーの収入源は、ほぼ広告掲載料金だけで、その資金の中で、記事の取材、編集・デザイン、印刷、輸送・配布費などの経費と収益を賄います。そのため、まずターゲットに必要な印刷部数を決め、広告掲載量、広告掲載料金、ページ構成などの収入と支出のベストバランスを探っていきます。
広告量と記事量の配分については、前回紹介した角川クロスメディア発行の「HighwayWalker」の場合、当初の計算では広告量7、記事量3の割合が採算ラインでした。しかし、これだと広告ばかりが目立ってしまうので、広告料金をアップすることでほぼ5:5の比率を確保しましたが、それでも広告量はかなり多い部類に属します。
発行部数は想定ターゲットの数から算出し、ページ数は広告収入と採算ラインに見合ったバランスでスタートします。知名度が上がり広告主が増えると、それに合わせてページ数を増やし採算性を高めていくのが一般的です。地方のフリーペーパーでは約1万部から、多いところで約30万部とさまざまですが、エリア当たり6〜8万部を発行しているところが多いようです。
2007年10月にヘラクレス上場を果たした千葉県の「地域新聞」は、全くの素人夫婦の手により200万円を元手に、週1回、2万2千部、発行費用28万円でスタートしました(1984年9月)。当初は広告が集まらず赤字続きで、やっと軌道に乗ったのは3年目ぐらいからとか。今では地元の八千代市で約6万4千部、世帯普及率は3大新聞を抑え、90%を超えています。配布地域は千葉県と埼玉県の一部、計49エリアで、総発行部数は約170万部(タブロイド版)。さらにエリアを拡大中で、一般新聞にならって、折込チラシの取り扱いも始めています。
(左)千葉県のフリーペーパー「地域新聞」(右)「地域新聞」の主な掲載広告サイズ
(左)千葉県のフリーペーパー「地域新聞」(右)「地域新聞」の主な掲載広告サイズ 全3段広告:61,950円〜151,200円(配布地域により変動)
●「地域新聞」の各エリアごとの発行部数
3.フリーペーパーの関連ビジネス
◆配布ビジネス
フリーペーパーの配布方法で最もポピュラーなものは人海戦術による各戸配布(日本ポスティング協同組合)や新聞折り込みタイプですが、首都圏のフリーペーパーの創刊ラッシュで、いま注目されているのは鉄道駅構内のラックへ据え置きするタイプです。
首都圏のJRや東京メトロにとってフリーペーパー配布用ラックを置くビジネスは、従来の電飾広告や売店に代わって事業全体の中でも大きな位置を占めるようになってきました。ラックの設置代は路線、駅によってさまざまですが、JR東日本の場合、月に1台約3万円から40万円の10段階に設定。駅構内の環境さえ整えば、置いた分だけ稼げるまさに濡れ手で粟のビジネスモデルです。2003年12月から設置ビジネスを開始し、現在リクルートなど8社と契約し2007年度で推定年約8億円の収入。また東京メトロでは6社18誌を約160駅(約8割)に設置して年間約3億円、都営地下鉄は約40誌で約4億円の収入となっています。
「ホットペッパー」誌などの首都圏の主なフリーペーパーは、コンビニやスーパーなどの店舗店頭の専用ラック設置(1台約3万円/月)のほか、首都圏の駅頭でアルバイトによる手渡し、オフィスへも配布されています。
この7月から、ビジネス用品通販のアスクルは「ホットペッパー」誌と提携し、商品の納品と同時に本誌を同梱して届ける配布方法を東京都内に限定してスタートさせました。フリーペーパー各誌が配布方法を模索している状況が伺われます。
(左)東京メトロのラックの一例(右)東京都営地下鉄のラックの一例
(左)東京メトロのラックの一例(右)東京都営地下鉄のラックの一例
◆フリーペーパー発行支援ビジネス
フリーペーパーを創刊するのは資金さえあれば比較的簡単ですが、継続し、安定収益を確保するのは至難のわざです。資金力と企画・編集力を誇る大手出版社でさえ失敗する難しさがあります。そこで、対象読者や内容の絞り込みから、デザイン、印刷、配布まで、創刊をサポートするいわゆるフリーペーパー発行支援ビジネスが数多く登場しています。これらのビジネスは、印刷やデザイン事務所など得意な分野を持った会社が発展的にビジネス展開している例が多いようです。
全国のフリーペーパー誌と提携し、広告仲介業を行うフリーペーパー専門広告代理店も増加中です。専門性の高い商品や、地域マーケティングなど、希望するターゲットに商品を告知するためのノウハウや最適誌を広告主に提案するビジネスです。
フリーペーパーと最も密接な関係にあるのが印刷ビジネスです。印刷ビジネスは低コスト化と、宅配の利便性を活用できることで地方委託が進んでいます。フリーペーパー誌印刷専用のウェブサイトも数多く登場し、スピードと価格を競っています。ウェブ上で原稿をやりとりできる便利さと低料金、現金決済を行っているところが多く、印刷会社にとっては現金収入が魅力となっています。
(左)フリーペーパー発行支援サイトの例(右)フリーペーパー専用広告代理サイトの例
(左)フリーペーパー発行支援サイトの例(右)フリーペーパー専用広告代理サイトの例
4.まとめ
 フリーペーパー時代の波は、今まで有料雑誌のテリトリーだったコンテンツにまで進出しています。例えば、首都圏で無料配布されている「R25」は内容的に「SPA!」と競合する部分が多く、大阪南部で無料配布されている「NATTS」は「Kansai Walker」と印象が似通っています。また、伝統ある文芸誌「早稲田文学」までもが一時フリーペーパー化されていました。
フリーペーパーが創刊ラッシュを迎えている現在、広告主側にとっても、フリーペーパーは大きな広告効果が期待できる広告媒体のひとつとして映っており、新聞やテレビと共存し、相乗効果を発揮している現実を実感していると思われます。フリーペーパーは今後も、より大きな可能性を持つ媒体へと成長し、進化していくことでしょう。これはまた、印刷業界にとっても大きなビジネスチャンスの到来といえるのではないでしょうか。
フリーペーパーの「早稲田文学」
フリーペーパーの「早稲田文学」
※「早稲田文学」は、2005年11月号から2007年末までフリーペーパー形式で刊行。
2008年4月に「早稲田文学1」として早稲田文学会発行、太田出版発売にて復刊。
 
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