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ますます可能性が拡がってきたRFIDの現在と未来<第2回>
 
感圧紙の業界の未来を考える グリーンレポート
ますます可能性が拡がってきたRFIDの現在と未来<第2回> 2007/6/8
1.多業界からひっぱりだこの、新しい社会インフラ
2.高まる各業界の関心度と拡がる応用フィールド
3.印刷業界の取り組み〜大手印刷会社の事例
4.印刷媒体とリンクする開発事例
5.まとめ
1.多業界からひっぱりだこの、新しい社会インフラ
 3月6日から9日までの4日間、有明の東京ビッグサイトで、新たな社会インフラを創造する「ICカード」と「ICタグ」の総合展示会と銘打った『IC CARD WORLD 2007』が来場者数157,220人を集めて開催されました。この展示会は今年で9回目を迎えたもので、第1回の1999年の出展社数40社に対して今回出展した社数は79社(過去最高)とそれほど増加していないように見えますが、展示小間数は第1回の89小間から244小間と、ICカードやICタグの急速な普及を反映した数字が出ています。出展分野を見てみると、ICカードやICタグの本体、チップ、関連機器はもちろん、交通、モバイル、決済、セキュリティ、流通・物流、行政・公共といった幅広い分野におけるソリューションやサービスが目白押しで、新たなビジネスチャンスをつかもうと、従来応用が見込まれていた業界以外にも、さまざまな業界の人々が訪れていたようです。
そこでまず、前回ご紹介した以外の業界で具体的にどのようなカタチで応用が模索されてきているのか、いくつかの例を見ていきましょう。
●「IC CARD WORLD」の出展社数・展示小間数の推移
2.高まる各業界の関心度と拡がる応用フィールド
 流通・物流、交通、決済、セキュリティなどへの導入は前回ご紹介しましたので、今回はそれ以外の業界・分野の動きについて簡単に見ていくことにしましょう。

行政・公共分野では、今年1月からすでにICカード化された運転免許証のほかに、健康保険証も平成24年度をめどにICカード化する構想が検討されています。厚生労働省では、これを基に患者の病歴や受診内容をデータベース化し、医療機関が変わっても持病やアレルギーなど患者の詳細な健康状態を踏まえた診断ができるようにすることなどを目論んでいるようです。
ユニークなものでは、街路灯や植樹帯などに計約1万個のICタグを取り付け、携帯電話を使って銀座などの店舗や観光情報を歩行者に提供しようという東京都の試みがあります。他の観光地などでも同様の実験が行われはじめているようですが、音声や使い勝手などまだまだ改善の余地があるようです。
●東京ユビキタス計画
 建築分野では、日本総合研究所が積水ハウスと共同で進めているICタグを活用した住宅現場向け廃棄物削減システムも今年1月から試験運用が開始され注目を集めています。このシステムは、各施工現場から排出される建設副産物の重量をICタグなどを用いることで1棟ごとに実測把握し、分別状態の良否を含む排出の状況を正確に把握することで生産や施工工程の改善につなげ、さらに廃棄物の追跡や事業所内の廃棄物発生量の削減やリサイクルの推進をも実現していこうという試みです。
また、住友大阪セメントは、ユビキタス・ネットワーキング研究所のユビキタス・コンピューティング技術「ucode(ユーコード)」を利用した、世界初のしゃべるコンクリート「電脳コンクリート」を開発。これはコンクリートのサンプルにICタグを埋め込み、専用リーダーをかざすことで記録した固有データを読み取れるようにしたもので、この技術を生かして「品質」「製造方法」「生産年月日」など、各製品固有のデータを購入者が音声で確認できる「コンクリート製品トレーサビリティシステム」を構築するなど住宅、耐震偽装など建築物の品質に対するユーザーの不安を解消し、知りたい情報をいつでも提供できる「建築物トレーサビリティシステム」へと進化させていく予定のようです。

ICタグ技術を応用した開発ラッシュは、まだまだ続いています。NECと東洋製罐が共同で開発したのはメーカーの販促キャンペーンや情報機器と連携した商品説明などの用途を見込んで世界で初めてRFIDタグを内蔵したペットボトルキャップ。福岡県内で居酒屋チェーンを展開する「夢花」は、無線ICタグを使って顧客がキープしているボトルを迅速に探し出すシステムを開発しています。また異業種への参入ということでは鉄道信号大手の日本信号が金融機関の文書管理に照準を当てて、重ねたICタグを1秒で30枚認識できるシステムを開発。立命館大では電子透かしの受講証の実験に着手。富士ゼロックスでは100回以上使える梱包材を開発。面白いものでは、人気バンド「ORANGE RANGE」のライブツアーに、ICチップ入りタオルマフラーでライブチケットの偽造防止と本人確認を実現した「入場受付システム」を提供した日立情報システムズの事例などもあり、RFIDおよびICタグを活用したありとあらゆる取り組みが大盛況といった様相を呈しています。
ICチップ入りタオルマフラーでライブチケットの偽造防止と本人確認を実現
日立情報システムズの「入場受付システム」
ライブチケットの代わりに、ICチップ入りのICタグを縫い付けたタオルマフラーを、ライブの申込者に事前に発送。当日に入場受付でICタグのIDを読み取ることで、チケットの偽造防止だけでなく本人確認を実施しチケットの不正転売などを防止。個人情報はすべてデータベースに管理され、タグにはIDのみ記録されているため、ICタグから個人情報が流出する心配はないという。   ●ICタグと小型コンテナを使った流通システムのイメージ
  〈出典〉日経産業新聞2007年3月16日
 
3.印刷業界の取り組み〜大手印刷会社の事例
 上述したように、RFIDおよびICタグ技術は、もはや「ペーパーレス化の動き」と視野を狭くして捉えてはいられないほどの社会現象となっていて、私たち印刷業界も手を加えて眺めているだけでは済まされない状況になってきていると言えます。
では、私たち印刷業界にこの技術を活用した新しいビジネスを誕生させる可能性はあるのでしょうか?
そこで次に、RFIDやICタグに関する最近のニュースから印刷業界に関わるいくつかのトピックにスポットを当ててみましょう。まずはICタグ事業にいち早く取り組み、ICタグの製造・販売や、ICタグを使ったさまざまなソリューションの開発などを行っている大日本印刷(株)や凸版印刷(株)の現況から。
1)大日本印刷の取り組み
2003年秋にICタグソリューションの展示および提案スペース『ICタグ実験工房』を東京と大阪で立ち上げた大日本印刷では、昨年10月に引き続き今年4月26日から、東京・DNP五反田ビルにルーヴル美術館と共同でICタグを使った美術作品の体験展を開催。音声ガイダンス端末と見学者の個別認識を行うUHF帯(極超短波)のICタグチケットを渡された見学者がスペース内に設置した鑑賞システムにICタグチケットを置くと、個別の音声ガイダンスが骨伝導スピーカー採用ヘッドフォンから流れるというシステムを提案しています。
また、非接触通信方式の国際規格に準拠した世界最小クラスのICタグを開発。「IC CARD WORLD 2007」にも出展し、この4月よりサンプル出荷をスタート。さまざまな用途での製品への取り付けが可能な超小型ICタグとして、今後、従来の物品管理用途だけでなく、識別コードだけで利用できる電子チケット、広告物、医薬品など消費者と密接に関連した用途についても普及が期待されています。
さらに従来のICカードよりも4分の1の費用で導入できるICタグを使い、パソコンの盗み見も防止できる入退出管理システムを発表。また、従来商品の半額(8,000〜9,000円)という価格の卓上用小型ICタグリーダ/ライタを開発。社員証等の簡易型セキュリティ需要や会員証等の特定消費者サービス需要の喚起を狙っているようです。

●『ルーヴル ― DNP ミュージアム ラボ』第2回展示
「古代ギリシアの小像、タナグラの優美」
http://www.dnp.co.jp/jis/news/2007/070425.html
2)凸版印刷の取り組み
2004年開催の「IC CARD WORLD」でトッパン・フォームズからすべての周波数に対応したICチップ「MMチップ」(0,5ミリ四方)を発表するなど、大日本印刷同様、ICタグ事業に力を注いできた凸版印刷でも、近年立て続けにさまざまなICタグによるソリューションシステムを開発しています。
今年に入ってからもICタグを導入した会員証・社員証需要を見込んだ「簡易勤怠管理システム」をはじめ、賞味期限や調合時間などの情報をICタグに記録する「食材料管理システム」、商品サンプルにICタグを付けバイヤーの引き合い情報を効果的・効率的に収集しスムーズな営業活動を補佐する「商談支援システム」などの開発を発表。「商談支援システム」では、選定サンプルの情報を記載した帳票を印刷し、ピックアップリストとしてバイヤーに持ち帰ってもらうこともできると言います。
また、入場の際にリーダ/ライタにかざすことでチケットに電子的に入場履歴を残すことができる「ICタグチケット」を開発。二重入場や不正入場の抑止/防止など入場管理がより正確に行えることから、Jリーグの大分トリニータでは「2007シーズンパス」としてすでに導入されています。
●凸版印刷の「商談支援システム」構成図
〈出典〉凸版印刷ニュースリリース
http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease546.html 
4.印刷媒体とリンクする開発事例
 このように印刷技術を応用・発展させることでICタグの製造技術を高め、その潜在能力を開発してさまざまなビジネス・ソリューションを提案している両社の事例は注目に値します。「規模が違うから」と客観的に捉えるより、その中に自社で実現可能な新規ビジネスのヒントを探る視点を持ちたいものです。
とはいえ、現実的な対応が求められる現在、もう少し目線を同じにした印刷媒体とリンクするICタグの開発事例も知りたいところだと思いますので、そんなトピックを2つほどご紹介しましょう。
1)いよいよ登場!紙製のICタグ
紙製容器などのメーカーが集う兵庫県紙器段ボール箱工業組合が、従来はほとんどが合成樹脂製だったICタグの“紙製化”に初めて成功したというニュースが聞こえてきたのは昨年6月。タグは縦1センチ、横5センチの紙に0.5ミリ四方のチップが張り付けてあり、製品情報などを記録。表面には電気を通すインク状の素材で模様が印刷されており、これがアンテナの役割を果たします。リーダをかざして情報を読み取る仕組みで箱の内側に張り付けることができ、記録量もバーコードより格段に多いと言います。9月の展示会で正式に発表され、当面は段ボール箱向けに実用化を急ぎ、流通や小売業界へと利用分野を広げていく考えのようです。
2)紙に埋め込める粉末状のICタグ
今年2月に日立製作所が発表したICタグは、大きさが0.05ミリ角、厚さが0.005ミリという粉末状の世界最小・最薄。2、3年後の実用化を目指してさらに開発を続けていくそうですが、紙幣や商品券、証明書などの薄い紙にも埋め込むことができるスグレもの。半導体の微細化技術を活用したほか、基板へのデータの書き込みに電子線を利用するなどして、従来品の64分の1と小型化を実現。また、原料のウエハ1枚からの生産枚数も増やすことができ大幅なコストダウンも見込めるようで、ICタグの用途をさらに飛躍的に拡大させることが期待されています。
●電子線技術による超小型の実現
5.まとめ
 このように、社会全体、または印刷業界を取り巻くRFIDの開発・普及の状況を概観してみると、印刷需要はその方向性を変えつつも、RFID、ICタグという“新たなメディア”とタッグを組むカタチで、大きな可能性を秘めた次代のステージに移行していることは確実です。課題は、対応するための設備投資と発想力。さまざまな機能性を持った“新たな帳票”という需要(概念)も発想次第では夢ではない、と言えそうです。
 
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